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 ハイデリヒで読書感想文

ハイデの幻影を追ってたらこんなところにたどり着いてしまったよ・夏休みの自由研究日記的な。その2。こじつけ読書感想文です。

日本が誇るノーベル物理学者、朝永振一郎氏をご存知でしょうか? 今度こそハイデと何の関係があるんだ、と思われるでしょうが。ええ、ほとんど関係ないんですが。朝永氏、1906年生まれなんです。ということは、1923-1906=17。…ハイデリヒと同い年なんですな。
正直すみません。夏に「日本にハイデがいたら…」「ハイデが生きていたなら…!」と妄想しすぎて、想像の翼が広がりまくりました。ただねえ…こんな逸話を読んでみたりすると、病弱な17歳と偉大な物理学者をちょっと重ねてみたくなったりするんですよ。以下少し引用。

朝永博士は小さいときから体が弱く、病気がちで両親をとても心配させました。学校も休みがちでした。朝永博士自身、子供のころを振り返り「気が弱く泣き虫でよくメソメソと泣いていた」と語っています。

不謹慎ながらちょっと萌える(失礼)。上記のサイトにある朝永先生の逸話はよくまとまっていて面白いです。ハイデリヒも生きていれば、こんな感じで大学に行ったり、留学したりしたのかなーなんて考えるのも楽しかったり。

で、今回の本筋は朝永先生そのものではなく。

マキノノゾミ 1 東京原子核クラブ ハヤカワ演劇文庫

この戯曲なのでした。
実はこの作品、朝永振一郎氏の大学生時代を戯曲化したものです。戦前の貧しいなか、理想を追って必死で生きる若者たちを群像劇で描きつつ、原子爆弾の投下によって浮き彫りとなる、「科学者の業」をも描いています。
彼の貧乏学生ぶりと理想に燃える様が、またまたドイツで一生懸命ロケット作ってるハイデリヒにつながるというわけで…。「なにを見てもデリヒに見える」とはよく言ったもんです。

貧乏下宿の会話がかわいかったので一部抜書きしてみました。

「じゃあ結局、俺らがやっとった陽電子の問題はベーテとハイトラーに先を越されてまったってことやないですか。」
「まあ、今回のことはそうやけどな、逆に考えたら、俺たちもむこうと同じ時期に同じ問題に注目できとったわけやからな。」
「そりゃ、そうですけど」
「これこそまさに、わが西田研究室はヨーロッパから郵便が届く二週間しか世界から遅れてないゆうことの格好の証明やないか。」
「そりゃ僕だって、毎月新着の『フィジカル・レビュー』開くたびにワクワクはしますけどね」
「だろう?」
(略)
「クサらないクサらない。とにかく、中性子の発見、陽電子の発見、重水素の発見と、いまや世界の物理学界は湧き立っとる。俺たちだってその最前線におるわけやから。」
「武山さんたち実験組でも、早くコックロフトやウォルトンのような加速器を使って、原子核を壊してみたいっていきまいとりゃあすしね。」
「そうだよ。」
「そうですね。」
「……原子核か。」
「……ええ。」
「いよいよだな。」
「いよいよです。」
(要約)階下から匂いがする。
「……小森君。」
「……はい。」
「ライスカレーだな。」
「ライスカレーです。」
(要約)二人、ガッチリ握手する。
「長かったもんナァ、メザシ」
「二週間メザシは新記録でしたもんね」
「今夜もメザシやったら引っ越そう思うてたくらいや」
「僕もです」
「もう少し、ここで匂いかいでいこうか。」
「はい。」

世界最先端の研究に遅れをとるまいと頑張る若き学徒ぶりと、カレーにうっとりとしてしまう若者っぷりが共存している様子がかわいくてかわいくて…。
ドイツだったらなんだろうなぁ。
「おい、ソーセージの匂いがしないか!?」
「ホントだ、肉の匂いがする!」
「ふかしたじゃがいも以外の匂いをかぐの…久しぶりですよね…」
「しばらくここで匂い嗅いでこうぜ」

みたいな? ああかわいらしい。

そして物語の終盤、原爆が落ちて日本は終戦を迎えます。
そこでの主人公の言葉。

「広島に原子爆弾が落ちた時には、正直、驚きました。心底負けたと感じました。……でも、片方では、そのニュースに興奮もしとったんです。人間がついに原子核エネルギーを解放したというその事実に、興奮せずにはおられなんだ自分というのもおったわけです。……これは、罪深いことだと今は思ってます。しかし、だからといって、この先、物理をやめてしまおうとは考えられんのです。」
「……」
「これが友田さんの言っていた「道を過る」ということなんでしょうかね。
「…僕達が手に入れた知識は、もう二度と失くすことのできない知識だよ。たとえ、それが罪だと知ってもね。」
「罪? ……そんな簡単な言葉で済ませてしまえるものなんですか。」
「僕は一個の物理学者として、桐子さんと同じ立場には立てません。(略)人間の大脳皮質が発達を続ける限り、自然法則の探究を止めることは不可能だからです。(略)」
「……」
「けれど、桐子さんの言葉は、まっとうな人間の言葉だと思います。それこそが、まっとうな人間の口から出る、ごく当たり前の言葉なんだということだけは、肝に銘じておきます。そうでなければ……」
「……友田さん?」
「……そうでなければ、きっと……誰が橋場君や林田君(戦死した友人)を殺したのか、わからないようになってしまう。」


ハイデリヒのモデルではないかと思っているロケット工学者、フォン・ブラウンの言葉を思い出します。
「宇宙にいく為なら悪魔に魂を売り渡してもよいと思った」
ハイデリヒだってエドの諫言を聞こうともせずにロケットを作ってましたし…。

夏が来るたびに、ロケットが打ちあがるたびに、科学には常に光と影があることを思い出すのでしょう。
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